高齢者が命を落とす原因として多いのが、肺炎です。現在、日本では、65歳以上の高齢者の死因・第4位が肺炎といわれています。肺炎といえば、歯周病とは関係ないだろうと思うかもしれませんが、そうではありません。歯周病を発端とする「誤嚥性肺炎」が、多くの高齢者の命を奪っているのです。ここでは、恐ろしい肺炎と歯周病の関係について、詳しく説明します。
歯周病ってどんな病気?歯周病菌の特徴とは?
歯周病とは、歯周病の原因菌が歯と歯茎の隙間である歯周ポケットに入り込み、炎症を起こす疾患です。歯周病は、食べ物に含まれる糖をエサとし、食べカスやプラーク(歯垢)を温床として増殖します。初期の歯周病には痛みなどの自覚症状が少ないため、気付きにくいのが特徴です。これを放置していると、どんどん歯や歯の周辺の骨が溶かされ、最終的には歯が抜け落ちるところまで悪化します。歯周病菌は、歯周病の症状が進むほど歯の表面に張り付いて剥がれにくくなる性質を持っています。症状が進行して酷くなればなるほど、どんなに丁寧にブラッシングをしても、自力で落とすことが難しくなっていきます。そうして、口内は、常に歯周病菌がうようよと存在している状態になってしまいます。
歯周病菌が引き起こす「誤嚥性肺炎」とは?
高齢者や介護を受けている人は、食べ物を飲み込む力…嚥下力が低下しています。そのため、唾液やプラーク、食べ物の欠片が誤って気管に入り込んでしまう「誤嚥」を起こしやすくなります。そこに歯周病菌が付着していると、その菌が原因となり肺炎を引き起こすことになります。これが、肺炎の中でも誤嚥を原因とする「誤嚥性肺炎」。この病気を発症した患者から、歯周病菌がみつかることが非常に多くなっています。高齢で飲み込む力が低下して誤嚥を起こしやすい状態になってしまったら、人一倍、口腔ケアに注力する必要があるのです。自分でケアするのが難しい場合は、歯科医師などプロの手を借りて、口腔ケアや歯の定期健診・メンテナンスをしっかりと行うようにしましょう。歯周病菌が口内から減少すると、肺炎の発症率が下がった、という調査報告もあります。
命を落とすほど重症化。歯周病菌を原因とする恐い肺炎
歯周病菌が、誤嚥を起こしたせいで気管から肺に入ってしまうと、どうしてそんなにも多くの人が命を落としてしまうほど症状が重症化するのでしょうか?それは、歯周病菌が口内で増殖しているといった段階で、既に身体の免疫機能が低下している状態にあるためです。また、歯周病と糖尿病はとても密接な関係にあります。歯周病を発症している人は、たとえまだ糖尿病を発症していないとしても、糖尿病予備軍であることが多いのです。糖尿病にかかると、歯周病の重症化のほかにも多くの合併症がおこります。網膜症・腎症・神経障害・大血管障害・末梢血管障害などがそれにあたり、身体を守る免疫機能も著しく低下します。同様に、発症まで至っていない糖尿病予備軍の人も、健康な人に比べると免疫機能が下がっています。体内は、既に菌やウイルスに感染しやすい環境が整っている状態なのです。歯周病菌が、食べ物と一緒に食道をとおって胃に入った場合は、胃液が持つ強い殺菌作用で消滅させられることがほとんどです。しかし、ひとたび誤って肺に入ってしまうと、肺炎を引き起こし、命の危険にさらされることになりかねません。
まとめ
嚥下力が低下していると感じたら、健康な時よりも一層しっかりと口腔ケアを行う必要があるのです。恐ろしい肺炎を発病して命の危険にさらされないよう、日頃から口内の定期健診やメンテナンスを行っておきましょう。